ウッドピタの地震防災コラム

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地震2016年2月29日

3.11 大震災の教訓! 避難所生活の厳しい現実①

こんにちは。

2月に入って、台湾やニュージーランドでM5以上の地震が発生しています。
それでなくても1月~3月は何となく落ち着きがなく、胸がざわつく季節です。
そう、阪神・淡路大震災(1995年1月17日)と東日本大震災(2011年3月11日)を思い出すからです。
この2つの大震災から得た教訓の一つに、「避難所生活」があります。
そこで、「自分が被災したらどんな体験をすることになるのか」を想像しつつ、
3回に分けて避難所生活の厳しさを取り上げてみたいと思います。


目次:

↓ 南海トラフ巨大地震では約500万人が避難所生活か?!

↓ 避難所生活の問題点① 命は助かったけれど…。

↓ 3.11 大震災の教訓! 避難所生活の厳しい現実① まとめ



南海トラフ巨大地震では約500万人が避難所生活か?!


阪神・淡路大震災では地震発生から6日目がピークで、316,678人が避難所で生活していました。
東日本大震災では、地震発生から3日目がピークで、468,600人が避難所で生活していました。
しかし、今後想定される南海トラフ巨大地震と首都直下地震では、ケタ違いの避難者数が予想されています。
その数、何と500万人290万人!(避難所避難者数のみ)
一旦地震が起きれば、私たち自身がいつ避難所生活になってもおかしくないのです。

避難者数(人)
大震災 避難者数(人)グラフ
※阪神・淡路大震災と東日本大震災の避難者数は国土交通省HP「東日本大震災における避難者数の
 推移(発災後1ケ月間の阪神・淡路大震災との比較)」より




首都直下地震の避難者数(想定)
首都直下地震の避難者数(想定)グラフ
※中央防災会議・首都直下地震対策検討ワーキンググループ
 「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」別添資料より





南海トラフ巨大地震 避難者数(想定)
南海トラフ巨大地震 避難者数(想定)グラフ
※中央防災会議・防災対策推進検討会議・南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ
 「南海トラフ巨大地震の被害想定について(第二次報告)~施設等の被害~【定量的な被害量】」より




避難所生活の問題点① 命は助かったけれど…。


学校や公民館といった公的な施設が多い避難所。そこでの不安要素の第一は余震の怖さはもちろんですが、それ以外にも多くの不安を抱えたまま数百人もが寝起きを共にするわけですから、いろいろなトラブルが起こります。以下は、阪神・淡路大震災や新潟中越地震、新潟中越地震、東日本大震災の避難所生活から見えてきた問題点の一例です。

場所の争奪戦で弱者にしわ寄せ。
大勢が避難所に集中すると、横になるだけで精いっぱい。しかも、❝いい場所❞を取るのは早い者勝ち、押しの強い者勝ちになりかねません。その反面、トイレが近いお年寄りが「夜中にみんなの眠りを妨げてはいけないから」と隙間風が身にしみる戸口にいたり、「赤ちゃんの泣き声で迷惑をかけるから」と母子が遠慮して廊下にいたり…と、生活者同士の力関係が大きく影響したようです。

救援物資はすぐには届かない。
家が倒壊するほどの地震ということは、周辺も被害が大きく、近隣からの支援はすぐには期待できません。道路事情などから自衛隊などによる救援物資もすぐには届かず、多くの避難所では食べ物や水の配給が始まったのはおよそ4日後あたりから。物資の配給に偏りが出るという問題もあります。マスコミに取り上げられた避難所には支援物資があふれているのに、人数分の食事が届かない避難所もある…といった不公平な事態も起きました。

体育館や講堂はホテルではない。
避難所の多くは学校で、大人数が収容できる体育館や講堂が被災した人々に開放されます。しかし、そこはもともと生活するための場所ではありません。冬は寒く、夏は暑い。硬い床。明るすぎる照明。トイレの数も足りません。でも、避難所はホテルではないので、自分たちで解決する方法を見つけるか、がまんしなければいけません。それに、避難所となった施設もどれほどの被害があるのか。その大小によって危険性が高いと判断されたら、別の避難所へ移動することになります。

環境への不満が疲れを倍増する。
慣れない避難所生活に、誰もがさまざまな不満を抱え込んでしまいます。

●プライバシーがありません。周囲の雑音も気になります。よく眠れないのも当然です。

●食事や水の配給に長蛇の列ができ、何時間も並ばなければいけません。疲れは増すばかりです。

●自由にお風呂に入れません。不衛生ですし、疲れた心身を癒すこともできません。時間も他人の目も気にせず、ゆったりと湯船に浸かれるのはいつのことでしょうか。
こうして疲れはどんどん溜まっていってしまいます。

居づらくて避難所を出てしまう人も…。
共同生活に疲弊して、倒壊しそうな家に戻ってしまう人がいます。また、「車の中で寝泊まりするほうが気が楽」という人も出てきます。しかし、車中泊を何日も続けると、エコノミークラス症候群になる危険性が高いということは、報道などで多くのみなさんがもうご存じのことでしょう。

エコノミークラス症候群
食事や水分を十分にとらない状態で、車などの狭い座席に長時間座っているなどして足を動かさないと、血行不良が起こり、血液が固まりやすくなります。その結果、血の固まり(血栓)が足から肺などにとび、血管を詰まらせ肺塞栓などを誘発する恐れがあります。この症状をエコノミークラス症候群と呼んでいます。(厚生労働省HPより)




3.11 大震災の教訓! 避難所生活の厳しい現実① まとめ


防災訓練のように「避難所に移動して終了!」とならないのが本当の災害の過酷なところです。もちろん、運営の上手な避難所もたくさんあります。ここには被災時の心がまえとして、「こんなこともあり得ます」という問題点をあえて挙げました。次回も引き続き問題点を探っていきます。




〈参考資料〉
「阪神・淡路大震災における避難所の研究」(大阪大学出版会)
「あのとき避難所は~阪神・淡路大震災のリーダーたち」(ブレーン出版)
「地震 住まい 生活~阪神・淡路大震災の教訓」(彰国社)
「大震災とコミュニティ~復興は〝人の絆〟から」(自治体研究社)
「被災生活ハンドブック」(本の泉社)