ウッドピタの地震防災コラム

ホーム  >  3.11 大震災の教訓! 避難所生活の厳しい現実②

地震2016年3月26日

3.11 大震災の教訓! 避難所生活の厳しい現実②

こんにちは。
3.11東日本大震災は今年で5周年を迎えました。
復興の前向きな話題に触れると私も元気をもらいます。
同時に、大震災の教訓を風化させてはいけないと思い、前回に引き続き、
「避難所生活の問題点」をいくつか挙げていきます。
ご家庭で防災について話し合う時に、参考にしていただけたら幸いです。


目次:

↓ 先が見えない避難期間。

↓ 避難所生活の問題点② 心身が蝕まれていく…。

↓ 避難所生活を支えるのは思いやりの精神。

↓ 3.11 大震災の教訓! 避難所生活の厳しい現実② まとめ


先が見えない避難所生活の期間。


地震の規模、被害の大きさによって、避難所で暮らす期間は異なります。家の復旧や、地域外への避難、仮設住宅への入居など、次のステップにいつ進めるのか、不安と焦りを抱えた毎日が続きます。阪神・淡路大震災では7か月後まで避難所は開設されていました。東日本大震災ではそれ以上の期間続いています。



避難所の推移


避難所生活の問題点② 心身が蝕まれていく…。


最初は命が助かった幸運を喜んでいても、長い避難所生活が続くと、普段の生活とのあまりの違いに、驚き、徐々に苦しくなってしまいます。




トイレ事情が命の危機を招く!

●避難所の利用者数に対しトイレの数が少ないため、トイレを使うにも行列ができます。
●水道が復旧していないので汚物を流せず、不衛生になっていくのも深刻な問題です。
●トイレが使えず外で穴を掘って用を足すという、緊急処置もとられました。
●仮設トイレには和式のものが多く、お年寄りや体の不自由な人には辛かったとも聞きました。

そんな状況から、トイレを我慢するようになり、膀胱炎になった人も多くいます。トイレに行かなくて済むようにと、水分補給を減らす人も。しかし、じっと動かず、水分補給も怠ると、エコノミークラス症候群の危険性が高まり、せっかく助かった命を落とすことにもなりかねません。



食事への不満がつのる。

「最初の3日間は1日1食、おにぎりだけ」「2枚の乾パンを家族3人で分けた」などと聞くと、避難所生活の厳しさが身にしみます。菓子パンやカップ麺ばかり食べていた例もあります。
配給や炊き出しが頼りですが、毎回同じような食事が長く続くと、食欲をなくし、不満もつのります。中にはお年寄りや食物アレルギーの人が食べられないものもあったりします。本来は活力の源となる食事がストレスの原因になってしまうのです。栄養不足、栄養の偏りも心配です。



病気の治療が十分にできない。

寒すぎたり、暑すぎたり、避難所の厳しい環境で体調をくずしやすくなります。眠れないことがそれに拍車をかけます。大勢が空間を共有するため、空気は濁り、風邪やインフルエンザが蔓延しやすくなります。医療チームの救援が来るまで、マスクの着用やうがい、手洗いなどで自衛するしかありません。
通院できないので薬が手に入らず、持病を悪化させる人もいます。だから、ボランティアで看護師さんや介護士さんが駆けつけてくれた時に、「改めてボランティアの役目の大きさに気付かされた」という現場の感想もありました。




精神的なストレスが弱者に向く。

極限状態が長く続くと、苛立ち、焦り、過労などで精神は疲れ切ってしまいます。ストレスを抱えた者同士、人間の嫌な面が露呈してしまうこともあります。

●外に向けて不満を言えない分、家族への暴力でうっ憤をはらすケースがあります。夫から妻へのDVや、親による幼児虐待などです。
飲酒によるトラブルが起きた避難所も少なくありません。

そういった状況があまり見受けられなかったところは、コミュニティのつながり、つまりご近所力が強い傾向にあった……という運営リーダーたちの声もありました。また、ボランティア団体のイベントに参加することでストレスを発散できることもあります。いざという時こそ、励まし、支え合える人の絆を信じたいものです。




避難所生活を支えるのは思いやりの精神。


これまで挙げてきた問題点の多くは、避難所がじょうずに運営されていれば解決できるものです。ただ、感じ方や生活習慣は人それぞれ。例えば……

●明かりがあると眠れない人と、明かりがないと不安な人がいます。
●間仕切りでプライバシーを守りたい人と、間仕切りで人の姿が見えないと不安に思う人がいます。
●子どもを可愛がることで元気を得る人と、子どもに慣れていなくて煩わしいと思う人がいます。
●ペットがいると癒される人と、動物は苦手の人、動物アレルギーの人がいます。

何百人を一つにまとめていくのは大変なことですが、運営サイドの強いリーダーシップ公平なルールづくり、そして何よりも互いの助け合いで乗り切っていった避難所の例も多数あります。もし避難所生活になってしまったら、まずは自分の隣りの人を思いやること。大震災の経験と記録を基に、自治体等から避難所運営マニュアルや避難所生活ガイドブックなども出ていますから、一度目を通しておくとよいかもしれません。




3.11 大震災の教訓! 避難所生活の厳しい現実② まとめ


被災者の方々にとって、避難所生活は思い出したくない日々かもしれませんね。
ごめんなさい。避難所生活を知らない私たちにとっては、みなさんの体験から学ぶしか、地震災害への準備ができないのです。できれば、体験談などをお聞かせいただけたらと思います。
次回は避難所生活の問題点のまとめとして、避難に際してのアドバイスをご紹介していきます。





<参考文献>
「阪神・淡路大震災における避難所の研究」(大阪大学出版会)
「あのとき避難所は~阪神・淡路大震災のリーダーたち」(ブレーン出版)
「地震 住まい 生活~阪神・淡路大震災の教訓」(彰国社)
「大震災とコミュニティ~復興は〝人の絆〟から」(自治体研究社)
「被災生活ハンドブック」(本の泉社)