ウッドピタの地震防災コラム

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地震2015年5月27日

世界の地震・日本の地震。他人事ではもう済まない!

こんにちは。

4月25日、ネパールでマグニチュード7.8の大地震が発生し、周辺国を併せて8700人以上(5月25日現在)の死者が出てしまいました。
5月6日に噴火警戒レベルが「2」に上がった箱根山では、数多くの人感地震も観測されています。さらに5月12日にはネパールをマグニチュード7.4の余震が襲い、翌日の5月13日には岩手県で東日本大震災の余震とみられるマグニチュード6.8・震度5強の地震が起こっています。
また、5月22日に鹿児島県奄美北部で震度5弱、5月25日には茨城県南部で震度5強、東京でも震度4を観測しました。
世界で、日本で、足元が揺らいでいます。
※マグニチュード:地震の規模(エネルギー)の大きさ
震度:地震の揺れの強さ


目次:

↓ 地震は世界でもこんなに起きている!

↓ 近年頻発している?! 日本の地震。

↓ 南海トラフ巨大地震の驚くべき被害想定。

↓ 日本に「絶対安全な場所」はない。

↓ 世界の地震・日本の地震・まとめ


地震は世界でもこんなに起きている!


地震とは、地下の岩盤がずれる現象を指します。その時に地震波が伝わり、地表の私たちは「揺れ」を感じます。一般的にはこの「揺れ」のことを地震と呼んでいますよね。
地球の表面は10数枚の岩盤の板(プレート)で覆われています(板といっても厚さが10~100kmもあります!)。それぞれのプレートはゆっくりと動いている(1年に数cm程度)ため、プレートとプレートがぶつかったり、一方のプレートがもう一方の下に潜り込んだりします。その時にプレートにかかるチカラが地震を引き起こすといわれています。下図を見ると、赤い部分が地震の発生場所です。プレートとプレートの境界部分に多いのがわかります。日本なんて国土がまるごと赤くなっていますね! また、ネパール大地震がユーラシアプレートとインドプレートの衝突で起きたということがよくわかります。


世界の主なプレートと地震の分布 ※気象庁HPより
世界の主なプレートと地震の分布

世界で起きた大きな地震についてもご紹介しておきましょう。記憶に新しいものも含まれています。ただし、地震の規模(マグニチュード)でピックアップしたもので、被害の大きさとは別です。阪神淡路大震災はマグニチュード7.3、4月のネパール大地震はマグニチュード7.8と推定されるのでここには入ってきていません。


1900年以降に発生した地震の規模の大きなもの(2012年4月11日現在) ※気象庁HP参照
順位マグニチュード(Mw)発生場所日時(日本時間)
19.5チリ1960年5月23日
29.2アラスカ湾1964年3月28日
39.1スマトラ島北部西方沖(インドネシア)2004年12月26日
49.0三陸沖(日本)2011年3月11東日本大震災
9.0カムチャッカ半島1952年11月5日
68.8マウリ沖(チリ)2010年2月27日
8.8エクアドル沖1906年2月1日
88.7アリューシャン列島(アラスカ)1965年2月4日
98.6スマトラ島北部(インドネシア)2005年3月29日
8.6アッサム(チベット)1950年8月15日
8.6スマトラ島北部西方沖(インドネシア)2012年4月11日
8.6アリューシャン列島(アラスカ)1957年3月9日

※マグニチュード(Mw):モーメントマグニチュード。地震波の周期と振幅の情報を用いる計算法。




近年頻発している?! 日本の地震。


日本の国土面積は世界全体の0.28%しかないそうです。それなのに、世界で発生したマグニチュード5.0以上の地震のうち、10%近くが日本周辺で起きています。地震大国と呼ばれるはずですね。前の章で「地球の表面は10数枚の岩盤の板(プレート)で隙間なく覆われている」と記しましたが、日本近辺は実に4つのプレートがぶつかり合う、世界有数の〈地震の巣〉なのです!


日本付近のプレートの模式図

図
※気象庁HPより

太平洋プレートとフィリピン海プレートは海のプレート、北米プレートとユーラシアプレートは陸のプレートです。
海のプレートが陸のプレートの下に潜り込んでいくと、陸のプレートの先端部が引きずり込まれ、そこにひずみが溜まります。ひずみは100~200年程度で限界となり、陸のプレートの先端部が跳ね返ります。その衝撃が海溝型地震を引き起こすわけです。巨大地震になりやすく、津波の警戒も必要です。東日本大震災はまさにこの型の地震でした。
一方、それぞれのプレートが押し合うチカラで、陸のプレート内の岩の層が壊れ、ずれるという断層活動が起きます。内陸型地震はこの時に発生します。都市の下でも起きるので、地震の規模のわりに被害が大きくなりやすいという特徴を、私たちは阪神淡路大震災で経験しました。



最近20年間に起きた震度5弱以上の地震回数 ※気象庁「震度データベース検索」で検索
震度5弱震度5強震度6弱震度6強震度7
1995年551阪神淡路大震災(1月17日)
1996年8
(内5弱は3)
8
(内5弱は3)
1997年541
1998年11
1999年3
2000年30861
2001年531
2002年4
2003年251
2004年1211221新潟県中越地震(10月23日)
2005年452
2006年3
2007年4212
2008年611
2009年31
2010年5
2011年4517441東日本大震災(3月11日)
2012年124
2013年561
2014年711


最近20年間で震度7の地震が3回もあったのですから、「地震が多い!」と感じますよね。小さい地震の回数も増えているのではないかと心配になってきます。ただ、長いスパンで見ると統計的には平均的で、地震活動が活発化しているわけではないという意見もあります。地震への関心が高まり、地震観測の地点も増えて地震情報がこまめに流されるようになったため、地震活動が活発になったという印象が強いのかもしれません。それに、やはり地震被害のリアルな映像は、忘れようにも忘れられない大きな衝撃でした。それに匹敵する大地震がもう起きないとは、誰にも言えません。



南海トラフ巨大地震の驚くべき被害想定。


南海トラフ周辺ではこれまで東海地震、東南海地震、南海地震などのマグニチュード8クラス巨大地震が約100年から200年ごとに発生しています。この三つの周期地震は、過去の傾向から非常に高い確率で連動して発生するものと考えられています。そこで、これまでそれぞれの地震の発生確率を予測していましたが、現在はこの南海トラフ周辺のいつどこで発生してもおかしくないという考えから、このエリアでの30年以内に発生する確率60~70%と言われています。


南海トラフ巨大地震の驚くべき被害想定

図1 南海トラフの評価対象領域とその区分け
・赤線は最大クラスの地震の震源域を示す。
・薄い赤線は震源域を類型化するために用いた領域分けの境界線を示す。
・破線は本評価で用いたフィリピン海プレート上面の等深線を示す。

※地震調査研究推進本部「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)」より


想定マグニチュードは8~9(最大9.1)……。う~ん、東日本大震災クラスです。
茨城から沖縄まで、広範囲にわたって震度6弱以上になると懸念されるため、被害想定はいろいろなケースで考えられています。ここでは東海地方が大きく被災するケースで最悪の場合の数字を挙げてみます。


東海地方が大きく被災するケース(最大の場合を抜粋)※内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定について(第一次報告)」より
被害   建物の全壊棟数   死者数
範囲   全 体 揺れによる   全 体 津波による 建物倒壊による
合 計   約1,823,000棟 約1,346,000棟   約278,000人 約196,000人 約59,000人
ワースト5   ①愛知県
約306,000棟
①愛知県
約243,000棟
  ①静岡県
約94,000人
①静岡県
約82,000人
①愛知県
約9,500人
  ②静岡県
約263,000棟
②静岡県
約21,5000棟
  ②三重県
約33,000人
②宮崎県
約25,000人
②静岡県
約9,100人
  ③三重県
約210,000棟
③高知県
約167,000棟
  ③和歌山県
約32,000人
③三重県
約24,000人
③高知県
約7,400人
  ④高知県
約201,000棟
④三重県
約163,000棟
  ④宮崎県
約27,000人
④和歌山県
約24,000人
④三重県
約6,800人
  ⑤愛媛県
約149,000棟
⑤愛媛県
約117,000棟
  ⑤高知県
約23,000人
⑤高知県
約11,000人
⑤和歌山県
約4,700人

各大震災との比較※阪神淡路大震災・東日本大震災のデータは消防庁「東日本大震災記録集」(2013年3月)より
震災名建物の全壊棟数(全体)死者数(全体)建物倒壊によると思われる 圧死等の割合
阪神淡路大震災(1995年)104,906棟6,434人83.3%
東日本大震災(2011年)129,391棟18,131人4.2%
南海トラフ巨大地震(2×××年)約1,823,000棟(想定)約278,000人(想定)21.2%(想定)

ちょっと……いや、とても怖い数字です。南海トラフ巨大地震は海溝型地震なので、どうしても津波による被害想定が大きくなってしまいますが、建物の倒壊による犠牲者も相当なものです。
県別で見ると、このケースの場合、建物の全壊棟数と建物倒壊による死者数で最も多いのが愛知県です。ちなみにウッドピタ事業本部は愛知県の名古屋市にあります。これは何とかしなくては!──と、思わず腕まくりです。




日本に「絶対安全な場所」はない。


南海トラフ巨大地震、首都直下地震…と、心配の種は尽きません。日本はいつ、どこで地震が起きても不思議ではないのです。
阪神淡路大震災以来、「活断層」という言葉を私たちはよく使うようになりました。内陸型地震の要因とされる断層のうち、約200万年前(!)あたりから活動し、今後も活動しそうなものを「活断層」と呼んでいます。現在、日本で見つかっている活断層は2000以上! 国が警戒を促しているものだけでも約100の活断層が存在します。


活断層地図 主要活断層 98断層帯のリスト※地震調査研究推進本部「活断層の調査結果」より
(図は地震情報サイトJISのHPより)(http://j-jis.com)
活断層地図 主要活断層 98断層帯のリスト


今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率※地震調査研究推進本部「確率論的地震動予測地図」より
今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率

皆様の住んでいる地域はいかがですか?
地震の危険性が高い地域から、地震の発生する確率が少ない土地を探して移転するという方法もありますが、生活基盤のことを考えるとなかなかできませんし、できても一種の賭けですね。移転した先で地震に遭わないと言いきれないのが日本です。
でも、建物が倒壊する確率を減らすことには取り組むことができます。
南海トラフ巨大地震の想定で震度6弱以上の揺れで倒壊が予想されるのは、老朽化した、耐震性の低い、木造住宅です。そのため、政府の予防対策の筆頭にも建物の耐震化が挙げられています。
2008年度の時点で住宅の耐震化率は全国平均約79%。この先、耐震化率を上げていけば、倒壊数も、それによる死傷者も減らすことができます。政府が掲げた目標は2015年度(今年です!)に90%、2020年度に95%というものです。
下記のグラフを見ると、耐震化を進めることの大切が身に染みてわかります。


(注意)下記グラフの想定ケースは、上記「東海地方が大きく被災するケース」とは異なるため、数字は一致しません。




建物の耐震性の強化 ※内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定について(第一次報告)」より
建物の耐震性の強化

  建物の耐震性強化
現状 耐震化率
90%
耐震化率
95%
耐震化率
100%
揺れによる全壊棟数 約627,000棟 約361,000棟 約240,000棟 約118,000棟
建物倒壊による死者数
(冬・深夜)
約38,000人 約21,000人 約14,000人 約5,800人

※地震動は基本ケース


まずは住んでいる地域の情報を市町村の防災マップなどから把握しましょう。地盤の強さはどうでしょうか。老朽化も含めて、わが家の耐震強度も知っておきたいですね。
ウッドピタは、日本各地どこで起こるか分からない地震から建物と皆様の命を守るため、全国で対応しています。木造家屋の耐震化をおすすめするにあたっては、その地域の特性に詳しい各地の工務店等からなる「ウッドピタ工法協会員」と連携し、皆様へ最適な補強のご提案を行っています。




世界の地震・日本の地震・まとめ


日本は確かに地震が多い国です。しかし、地震が起きるのは食い止められなくても、被害を少しでも減らすことは私たちにもできることです。国や自治体がやるべきこと。研究機関やメーカー、技術者がやるべきこと。そして暮らしの中で一人ひとりがやるべきこと。それぞれのレベルで地震から命を守るノウハウを極め、実行し、その成果を世界の地震国に発信していく───それができるのも私たち日本人ではないでしょうか。現に、地震防災分野では中南米やアジア諸国に技術協力・資金協力が続けられています。防災を担う人材教育の一環として、日本に地震工学の研修生が海外から大勢来ているとも聞きました。地震大国=防災・減災先進国ですね!




〈参考サイト〉
内閣府 防災情報のページ ホームページ(http://www.bousai.go.jp/)
気象庁ホームページ(http://www.jma.go.jp/)
地震調査研究推進本部ホームページ(http://www.jishin.go.jp/)
地震情報サイトJISホームページ(http://j-jis.com/)
国土地理院ホームページ(http://gsi.go.jp/)
消防庁ホームページ(http://fdma.go.jp/)